楽
無伴奏
故郷を遠く離れて
小さな街角で見上げる空には何か足りない
君と肩を組んでゆこう、と、
言った
君
秋の空にロックンロールが響く
秋の夜月にブルースが聴こえる
夕焼けが薄く残る西の空の向こう
僕らの故郷から四弦の音が聴こえる
何かが足りない街の空
ぼくたちは低く呟きながら歩く
故郷を遠く離れて
小さな街角で見上げる空には何か足りない
君と肩を組んでゆこう、と、
言った
君
秋の空にロックンロールが響く
秋の夜月にブルースが聴こえる
夕焼けが薄く残る西の空の向こう
僕らの故郷から四弦の音が聴こえる
何かが足りない街の空
ぼくたちは低く呟きながら歩く
故郷を遠く離れて
小さな娘が思ったこと
「小さな娘が思ったこと」 茨木のり子
小さな娘が思ったこと
ひとの奥さんの肩はなぜあんなに匂うのだろう
木犀みたいに
くちなしみたいに
ひとの奥さんの肩にかかる
あの淡い靄のようなものは
なんだろう?
小さな娘は自分もそれを欲しいと思った
どんなきれいな娘にもない
とても素敵な或るなにか…
小さな娘がおとなになって
妻になって母になって
ある日不意に気づいてしまう
ひとの奥さんの肩にふりつもる
あのやさしいものは
日々
ひとを愛してゆくための
ただの疲労であったと
小さな娘が思ったこと
ひとの奥さんの肩はなぜあんなに匂うのだろう
木犀みたいに
くちなしみたいに
ひとの奥さんの肩にかかる
あの淡い靄のようなものは
なんだろう?
小さな娘は自分もそれを欲しいと思った
どんなきれいな娘にもない
とても素敵な或るなにか…
小さな娘がおとなになって
妻になって母になって
ある日不意に気づいてしまう
ひとの奥さんの肩にふりつもる
あのやさしいものは
日々
ひとを愛してゆくための
ただの疲労であったと
問うてる
僕は考えてるんだ
願うのにも似たような気持ちで
あるひとつのことをずっと
問うてるんだ
だけど花のようなものは薄い雲の向こうにまだ見えず
ねえ、教えてくれないか
月
祈りのような僕の考えの行きつく場所にあるその答えを
だけどほんとうは僕にさえ
この祈りの真ん中は分からない
僕は何をどう思おう、
どんな言葉で君に伝えよう
直線で切り取られた夜空
星が消えそうな僕らの町
願うのにも似たような気持ちで
あるひとつのことをずっと
問うてるんだ
だけど花のようなものは薄い雲の向こうにまだ見えず
ねえ、教えてくれないか
月
祈りのような僕の考えの行きつく場所にあるその答えを
だけどほんとうは僕にさえ
この祈りの真ん中は分からない
僕は何をどう思おう、
どんな言葉で君に伝えよう
直線で切り取られた夜空
星が消えそうな僕らの町
月に照る雲
言葉にならないことばかり
想いはちりのように積もってこの目を覆ったのだろうか
できることならすべて花のようにかがやくものに変えて
緑の上に蒔くように
言葉にできることなどほんとうはほんのすこし
砂浜でなくした大切なもののように
.............
流れることのないまましまいこまれた涙
夜空の中で
照りながら流れる雲の切れ間のその向こう側に目を凝らすような思い
想いはちりのように積もってこの目を覆ったのだろうか
できることならすべて花のようにかがやくものに変えて
緑の上に蒔くように
言葉にできることなどほんとうはほんのすこし
砂浜でなくした大切なもののように
.............
流れることのないまましまいこまれた涙
夜空の中で
照りながら流れる雲の切れ間のその向こう側に目を凝らすような思い
あと幾度の
あと幾度の
夕陽にかがやく海だろう
あと幾度の 舞い落ちる銀杏の葉だろう
あと幾度踏みしめる銀色の雪だろう
あと幾度見上げる
静かに立つ桜の樹か
季節が巡りゆくそのたびに
息をつめるように想おう
生かされてあることの美しさに
言葉をなくして立ち尽くすように
夕陽にかがやく海だろう
あと幾度の 舞い落ちる銀杏の葉だろう
あと幾度踏みしめる銀色の雪だろう
あと幾度見上げる
静かに立つ桜の樹か
季節が巡りゆくそのたびに
息をつめるように想おう
生かされてあることの美しさに
言葉をなくして立ち尽くすように
のぞみ
ほんとうのことだけを知りたい
ほんとうのことだけが欲しい
ひとと自分を
ただしく愛するために必要なだけの
わずかな
ひそかな
ほんとうだけが欲しい
………………
紙コップみたいなこころをかかえて今日も生きる
ほんとうのことだけが欲しい
ひとと自分を
ただしく愛するために必要なだけの
わずかな
ひそかな
ほんとうだけが欲しい
………………
紙コップみたいなこころをかかえて今日も生きる
さいわい
波打ち際を満たされた気持ちで歩き
流れ着いたがらくたを拾いあつめてちいさな家を建てよう
磨かれた
柔らかな青いガラスの石に
あるひとつの
言葉を刻むのもいい
大きな水の音しか聞こえない
終わりのないような白い砂の大地に仰向けに寝転んで
両手を広げて
太陽と月を数えよう
ずっと
僕のとなりで君は
君のとなりで、僕は
沈む太陽と昇りゆく月を見ていよう
それらが素晴らしい絵画のように
空を染める朝も
静かにひかる夜も
奇跡のように訪れる
ひとつずつの季節の上で
太陽と月を
数えよう
まるで終わりのないような
白い砂の大地の上で
............
君のいる人生は
なんて素晴らしいのだろう。
流れ着いたがらくたを拾いあつめてちいさな家を建てよう
磨かれた
柔らかな青いガラスの石に
あるひとつの
言葉を刻むのもいい
大きな水の音しか聞こえない
終わりのないような白い砂の大地に仰向けに寝転んで
両手を広げて
太陽と月を数えよう
ずっと
僕のとなりで君は
君のとなりで、僕は
沈む太陽と昇りゆく月を見ていよう
それらが素晴らしい絵画のように
空を染める朝も
静かにひかる夜も
奇跡のように訪れる
ひとつずつの季節の上で
太陽と月を
数えよう
まるで終わりのないような
白い砂の大地の上で
............
君のいる人生は
なんて素晴らしいのだろう。
ソラ
通りはにぎやかで
ゆるやかに吹く風はまだ
少し冷たい
冬のおわりの光に照らされた花は少し淋しいので
思わずじっと見る
知らない誰かが幸せそうに笑っているところを
こっそりガラス越しに見ているのが好き
激しく流れるこの河のむこうになにかがある気がしてならなかったから
今までずっと
生きてきたような気がする
ゆるやかに吹く風はまだ
少し冷たい
冬のおわりの光に照らされた花は少し淋しいので
思わずじっと見る
知らない誰かが幸せそうに笑っているところを
こっそりガラス越しに見ているのが好き
激しく流れるこの河のむこうになにかがある気がしてならなかったから
今までずっと
生きてきたような気がする
時々輝くようなその一点
君にしか握れない鉛筆
君にしか描けない絵
君にしか入れない家
君にしか見えない空の色
君にしか嗅ぐことのできない
春の訪れの香り
君にしか見つけられない
小さな 忘れられた星
特別でなど
なくても良い
優れてさえ
いなくても良い
君にしか
見渡すことの出来ない
この世界に時々光る
美しい景色
つぶさに目を凝らさなくては
見つけられない
時々輝くようなその
一点
それを見つけ出そうとする
戦いのような現実上の一歩
それこそが
わたしたちが生まれたことの意味
真に
生きるということの
君にしか描けない絵
君にしか入れない家
君にしか見えない空の色
君にしか嗅ぐことのできない
春の訪れの香り
君にしか見つけられない
小さな 忘れられた星
特別でなど
なくても良い
優れてさえ
いなくても良い
君にしか
見渡すことの出来ない
この世界に時々光る
美しい景色
つぶさに目を凝らさなくては
見つけられない
時々輝くようなその
一点
それを見つけ出そうとする
戦いのような現実上の一歩
それこそが
わたしたちが生まれたことの意味
真に
生きるということの
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