シズカナ キオク
消えないで
泡みたいな小さな音 たてて
小さなからだでいっしょうけんめい、生きていた
こどもの頃の記憶
たいせつだったもの
たしかに愛されたこと
眠れずに泣いた夜のこと
きらきらひかるなわとびと
いつも取り合いになっていた一輪車
4時間目の給食のにおい
中学生になったお姉さんの自転車を追いかけて走った通学路
バレンタインデーのひみつのきもちと
小さくてもちゃんと真剣で切なかった 恋と
かわいいいたずらと
ざんこくな仲間はずれと
保健室の白いストーブ
らくがきだらけの机と
足りないものだらけのおどうぐばこ
へたくそな習字と
流し台の緑色のせっけん
雨にぬれた渡り廊下と
誰もいない授業中の校庭
裏山のぶどう畑のビニールがきらきら光っていた夏のことや
げたばこのすのこの音がかたかた
放課後のひんやりした校舎
ほんとうは
いきていることがこわかった
あのちいさな時間を過ぎて
今も私が、生かされて生きているということ
消えないで、小さな音、立ててさ
あの頃のちいさなわたしへ
だいじょうぶだよ
by hiromiwithk
| 2006-03-04 14:59
| 詩 うた